ビジネス書籍や経営哲学や経営学などに関する話

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目標管理と目標設定

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今回は「ドラッカー経営学」より

「目標管理と目標設定」について話して行きます。

 

【目次】

 

 

 

目標設定の必要性

 

「目標設定」の「重要性」ではなく「必要性」というタイトルのように会社において社員一人ひとりが「共通の目標」に貢献しなくてはなりません。社員一人ひとりの目標が「会社の目標達成」に向けられていなくては、その価値はないのです。

もちろん、仕事以外の事で個人的な趣味や自己啓発的なことであれば、それはそれで余暇を有意義に使ったり、人生に充実という点で良いことだと思うのですが、「仕事での目標」という事であれば話は違ってきます。以前の会社で仲の良かったマネージャー陣で部下の目標設定について話していたことがあるのですが、アルバイトの人が多い部署のマネージャーが「○○と別れたから新しい彼氏を作る!」と書いてあった。とか「今年は貯金をたくさんする」という事が書かれていたと苦笑いしていたことがあります。先ほども話しましたが、「人生の充実」や「余暇を楽しむ」という点はここの目標として素晴らしいモノだと思うのですが、やはり「仕事の目標」となると再考していただく方が良いでしょう。そこでベースになるのが「共通の目標達成」や「会社の目標達成」という事になるのです。

さらには仕事においての「個人の目標」が「部署の目標」あるいは「チームの目標」などと共通していて、一つのチーム、一つの部署が目標達成に貢献し、その複数のチームの部署やチームの総和が会社全体の目標達成に貢献するのが「会社の仕組み」です。

ですから、社員一人ひとりが「会社全体に貢献する」ということを前提に目標設定することが必要になるのです

 

目標の作り方

 

会社では社長から末端の担当者まで、明確な目標を持たなくてはなりません。そのための目標設定の手順について話して行きます。

1、会社の全体の目標を知る

2、自分の部署やチームの果たすべき貢献から、生み出す成果を明らかにする

3、他部門の目標達成に貢献するために何をするかを明らかにする

4、自部門の目標達成のために他部門から得られる貢献を明らかにする

ということです。

最初の段階から「会社」をチームとしてとらえ、その「会社」というチーム内に階層的にチームが存在し、その目標をそれぞれ設定して行くのです。ですから、「チームや部署の成果を重視」しなくてはいけないのです。

 

マーケティングの目標設定

 

ここではマーケティングを「顧客から始まる事業全体」と定義付けたいと思いますので、その前提で話を進めていきたいと思います。そう考えると、まず「顧客を誰にするのか」という事が問題になります。そこで必要になってくるのが「集中の目標」と「市場地位の目標」です。「集中の目標」というのは、「市場の細分化:セグメンテーション」で自社が優位に立てるように市場の細分化することです。よく「セグメント」という言葉が使われますが、それが「細分化する」という事です。「市場の位置の目標」とはよく使われる言葉で言えば「ポジショニング」と言いまして、特定の市場の中での地位を決めることです。

この二つの目標を定めつつ、それだけでは焦点がハッキリしませんので更に細分化して行く事になりますが、それが以下の7つの目標領域です。

1、既存市場・既存商品での市場シェアと売上高

2、新市場・既存市場での市場シェアと売上高

3、既存市場・新商品での市場シェアと売上高

4、新市場・新商品での市場シェアと売上高

これら細分化しつつ、更に

5、新しい流通チャンネルや価格政策

6、アフターなどのサービス

と共に

7、廃棄すべき市場や顧客・商品

の目標を設定して行く事が重要になるのです。

 

イノベーションの目標

 

以前にも話しましたが「イノベーション」とは「技術革新」や「技術開発」の事だけではなく「新しい経済価値を生み出す活動全体」です。

 

自社の事業を検討する時に確認することは

1、自社の事業は何か

2、このままいくとどうなるか

3、どのような事業になるべきか

というのがあります。

中でも「3」の定義の実行に必要になるのがイノベーションの目標です。

 

「イノベーションの目標」にも3つの種類があり、それぞれ

1、商品やサービスに関するもの

2、市場・消費者行動・消費者の価値に関するもの

3、商品を市場に持って行くまでに必要なもの

があり、

「1、商品やサービスに関するもの」は商品開発や新用途の開拓や、それ連必要な技術開発という事になるので、一般的にイメージしやすいイノベーションと言えます。

「2、市場・消費者行動・消費者の価値に関するもの」は「商品の意味の変更」所有価値から使用価値への啓蒙などがあります。「商品の意味の変更」を例えるなら、「お酢」という商品は、それ単独では「調味料」になりますが、「健康補助食品」として販売することです。「所有価値から使用価値への啓蒙」はDVDなどの販売からレンタルにするなどが分かりやすいイメージでしょうか。

「3、商品を市場に持って行くまでに必要なもの」は物流の単独配送から共同配送にしたり、今まで集金していたものを口座振替にするなどの「業務改善」などもイノベーションの目標になります。

これらのうちのどれを重視するのか。という事や会社の置かれている状況や環境が違うので、「短期的に多大な成果を出すこと」と「長期的に一定の成果を出すこと」の落ちらが優れているのか。という事は一概には言えません。先ほどの1から3の最優先事項から判断するなどしかありません。ですから、イノベーションは「効果測定が難しい」と言われているのです。

 

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生産性の目標

 

会社は「売上」だけを上げても「利益」にして出さなくては存続することは出来ません。マーケティングやイノベーションなどを駆使して作った「売上」を「利益」に転換するのが「生産性」であり、この「生産性」が業績を決定するのです。

 

生産性の目標が必要な理由は、社内だけでは「努力(コスト)」しか見えてきません。ですから、「自分たちがどれだけ努力したのか」を客観的に知る必要があるのです。

簡単に言えば自分たちがいくら「がんばっている」と言っても「同業他社と比べて自分たちがどのくらいなのか」という事や「他業界の最高の業績を出してる会社と比べてどうなのか」などを知っておかなければいけません。よく「他の人と比べる事は良くない」と言いますが、それは小中学生や家庭内での兄弟姉妹での話です。兄弟姉妹は別としても、実際には小中学校でも自然と競争環境は出来ているものです。

小中学校などでは同じ学校であれば同じ教科書やカリキュラムに沿って勉強するワケですが、それでも優劣が付きます。会社も同じで多くの場合、使っている経営資源はほとんど変わらないのですが、業績に差が出るものです。それは単純に「経営資源の活用方法の違い」によるものです。

 

生産性の目標で言えば、

1、付加価値を高める

2、付加価値の中でも利益を高めて行く

という事がその目標になります。

その背景として、「個別の生産目標」を設定してしまうと、そればかり注目してしまって、他の経営資源を犠牲にしてしまう事が多々あります。ですから、バランスよく生産性を高めて行く事が重要になるのです。

 

人的資源の目標設定

 

「企業は人なり」と多くの経営者が口にしますが、「本気でそう思っている経営者は少ない」とドラッカーは言っています。そして「更に実際に行動している経営者はさらに少ない」とも言っています。いかに機械が優れていようと、その機械に良い仕事をさせるのは「人」の役割なのです。

ですから、そのような考えから、いかに「人」の役割やその存在の重要性が分かると思います。ここでいう「人」とは「人材」の事であり、更に言えば「優秀な人材」という事になります。言うまでもないことですが優秀な人材というのは少ないモノですし、どこの会社にも必要とされています。このような優れた人材を手に入れるには「マーケティング志向」が欠かせないのです。その理由としては優秀な人材の判断基準は「自分にとってどの会社が最もやりがいがある仕事が出来るか、自分が成長できるか、経済的に有利か」という事だからです。

 

人的に資源の目標設定で言うのであれば

・いつ頃までにどのような事ができる人材をどれくらい必要とするか

・集めた人材をどのように配置、教育し、貢献させるか

ということ中長期的な視点で計画することです。

 

 

 

物的資源の目標

 

物的資源というと機械設備や工場や倉庫、本社社屋などの施設をイメージすると思いますが、それだけが物的資源の目標ではなく、マーケティングに関連する営業所や店舗も対象になりますし、備品や什器などもその対象になります。他にも「原材料の調達方法」なども考えて行く必要があります。例えば原材料の購入を一社に絞るのか、安い時に大量に購入するのか、年間契約をするのかなどが重要になりますし、「どこから調達するのか」と同じくらい「何を調達するのか」という事も重要な課題です。

 

物的資源の目標で言うのであれば、「質的」「量的」「価格面」「タイミング」の基準や範囲を設定する必要があります。

また、設備や施設などは後々、固定費として経営に強く影響するものなので「経験と勘」に頼らずに「経営指針」「戦略」に基づいて計画的な設定が必要になるのです。

 

資金の目標

 

会社にとって「資金」は人間で言えば「血液」と同じですから、資金調達ができなければ、事業活動は停止する事になります。よく主に中小企業では「自転車操業」と言いますが、その理由は大企業が資金計画があるのに対して中小企業の場合は3カ月~6か月の資金繰りだけで回しているところが多いからです。

 

資金の目標で言えば、「人的、物的資源を含め、マーケティングやイノベーションの目標達成な資源を確保する」というモノであり、「どれくらいの資金をどのタイミングで、どこから調達するのか」を検討し、準備する事になります。

更に、価格、配当、原価償却、税務なども視野に入れて、直接的な調達コストだけではなく、包括的に検討することが必要になるのです。

また、資金を出す方に100%の選択権があるのですから、「いかに自社への投資が魅力的なものか」を伝える「マーケティング志向」が欠かせないモノとなるのです。

 

社会的責任の目標

 

会社というのは社会の仕組みの一つであり、「公器」とも言われています。「公器」というのは簡単に言えば、文字通りなのですが「おおやけの物」という意味です。「新聞は社会の公器」などという使われ方をします。そのように「公器」でもある会社は社会に対して「責任目標」を設定することは不可欠なのです。

もっと分かりやすき言えば、政治・経済・社会などというのは、その企業を倒産させる力を持っています。その力の範疇は、どのような巨大企業であっても例外ではないでしょう。ですから、社会に害を与えずに生産的に貢献している時においてのみ、存続を許されている。という事でもあるのです。

とは言え、「社会的責任」と言っても、すべての責任を負えるワケではありませんので、「自社の権限が及ぶ範囲内の責任を負う」という事になるのです。

そして社会的責任の目標は2つあります。

 

1、商品やサービスを通じて社会にイノベーションを起こすこと

2、環境汚染や周囲への迷惑を抑えるなど

この二つは会社が社会責任に対しての目標設定することが必要にな事になるのです。

 

利益の目標

 

今までの目標はすべて費用を必要とする目標でしたので、今度は反対に「費用を捻出するため」に「利益を出す」という事に関しての目標です。

そもそも「利益」とは事業を存続させるためのコストという事です。今まで話してきたすべての目標(マーケティング、イノベーション、生産性、人的資源、物的資源、資金、社会的責任)に対して必要な利益を上げられれている会社は存続が可能になる。という事になるのです。

 

利益の目標と言うと多くの人は「出来るだけ多く」と考えるでしょう。確かに多ければ多いほど良いとも言えるのですが目標とするのは「最低でもいくら必要か」という事なのです。

市場開拓や商品開発、顧客の維持と拡大、設備投資や施設の充実や補修、人材育成など、今期の費用と将来の費用の確保などをまかなえる数値となりますし、資金調達の上でも利益の状態が調達方法や調達額、調達コストに大きな影響を与えるのです。

また、優秀な人材を採用するにも、利益は優良企業の「モノサシ」になりますので、選択基準の重要な要素になって行きます。

このように利益は事業活動に大きな影響を与える制約条件です。利益は目的ではなく、絶対に達成しなくてはいけない目標なのです。